「サポートセンターでの体験」
藍口 信子
保護司にとって、サポートセンターは面接の場、研修の場、悩み相談の場、そして交流の場といろいろな役目を果たしています。
そのサポートセンターで私は、初めて貴重な体験をすることができました。
当時、新人保護司とベテラン保護司による、複数担当保護観察が提案されていました。
思いがけず私にその機会が訪れました。そして対象者のAさん、先輩保護司、私の三人での面接が始まりました。
面接回数が進むにつれて私はなんとなく、重苦しい雰囲気を感じるようになりました。
「この感じって何だろう?」と思いつつ、ある日思いつきで我が家の漬物をコーヒーと一緒に出しました。
Aさんは漬物を「美味しい」と一言。
一瞬その場の空気が和らいだように感じました。
話によるとAさんは今は一人身とのことでした。
それ以来、面接のときは家庭的な雰囲気になるように「ふきのとうの佃煮」、「枝豆」、季節の野菜の漬物、果物などを持参し、面接後の話題づくりをしました。次第にAさんは冗談を言うほどに打ち解けてくれました。
Aさんは交通手段は公共の乗り物、往訪は絶対ダメ、通信方法は皆無でした。そのため、先輩保護司はいろいろとご苦労をなさった様子でした。
私は連絡方法が一番心配でした。
でも、Aさんは、月二回の来訪は一度も忘れることもなく、面接時間より早く来て、サポートセンターの前で待っていることも度々ありました。
面接開始から2年くらい経ったある日、突然Aさんは勤務先の関係で他の保護区に転居が決まり、私たちの保護観察は終了となりました。Aさんは、「できるなら、ここでずーっと面接をうけたいなあ」と言って、去って行きました。
先輩保護司とは、その後もAさんの事が話題になるほど、心に残る複数担当保護観察でした。